東御で見つける美味しいマリアージュ
産地が同じものを合わせて楽しむマリアージュ
ヨーロッパでは、おいしいワインができる土地には、おいしいチーズがあると言います。それは醸造用ぶどうの適地である東御市でも同じ。
ワインでよく使われる“マリアージュ”という言葉は、ワインと料理の相性を指します。マリアージュにはいくつか定石があり、その中のひとつに「産地が同じものを合わせる」というものがあります。そのセオリーにならえば、同じ土地で作られたワインとチーズの相性は“鉄板”と言えそうです。
チーズ工房 アトリエ・ド・フロマージュ
東御市には、1982年創業のチーズ工房「アトリエ・ド・フロマージュ」があります。近年は、国内はもとより本場フランスのコンクールで受賞するなど、チーズづくりにますます磨きがかかっている老舗の工房です。
白カビタイプではおなじみ「カマンベール」、フランスのチーズコンクールで最高賞を受賞した青カビタイプの「ブルーチーズ」、珍しい酵母系熟成タイプの「ココン」、ハードタイプの「湯の丸高原 山のチーズ」など、フレッシュタイプから長期熟成タイプまで、さまざまなチーズを作っています。
もちろん原料となる生乳は地元の酪農家から毎朝、搾りたてを運んできている、まさに“地のチーズ”なのです。
今回は、「アトリエ・ド・フロマージュ」のレストラン「リストランテ フォルマッジオ」料理長・岩和幸さんに、東御ワインとアトリエ・ド・フロマージュのチーズのおすすめの組み合わせを教えていただきました。
写真/右が「リストランテ フォルマッジオ」料理長・岩和幸さん。左は製造部部長・粂井裕也さん。ワインはアトリエ・ド・フロマージュの自社畑でとれたぶどうを使ったハウスワイン2種
モッツァレラ × ソーヴィニヨン・ブラン
まず、フレッシュタイプの凝乳チーズ「モッツァレラ」から。元々はイタリア南部が原産で、アトリエ・ド・フロマージュはイタリアのチーズ職人から技術指導を受けた上で、東御の風土に合わせて改良を重ねています。
このモッツァレラには、リュードヴァンの「ソーヴィニヨン・ブラン」が合います。
というのも、モッツァレラはトマトとカプレーゼにしてそのまま食べることが多く、その場合はソーヴィニヨン・ブランがぴったりだからなのだとか。リュードヴァンのソーヴィニヨン・ブランは、しっかりとした骨格を持ちながら、青りんごやパッションフルーツを思わせる香りがさわやかな辛口ワインです。
リュードヴァンは2010年に設立されたワイナリーです。かつてはりんご農園だった荒廃地を開墾して、ブドウ畑に変えていきました。代表の小山英明さんは、国内外のワイナリーで経験を積んだ醸造技術者です。
カマンベール × クラカケ・シャルドネ
カマンベールは、フランスはノルマンディ地方のチーズです。ノルマンディといえばりんごの名産地でもあり、りんごから作られた発泡性のお酒シードルが地酒として有名。
産地が同じということで、カマンベールチーズにはシードルが合うとされていますが、岩さんはあまり合わないのではないかと言います。「特に、熟成が進んだカマンベールにはミスマッチです。むしろ、熟成に耐えるシャルドネのほうが合うのではないでしょうか。そこでおすすめなのが、カーヴハタノの鞍掛シャルドネです」
カーヴハタノはアトリエ・ド・フロマージュから歩いて行ける距離にあります。ワイン用ぶどう栽培からはじめ、2017年にワイナリーとしてオープンしました。ヴィラデストワイナリーで7年間ワイン造りに携わり、独立した波田野信孝さんのワイナリーです。
シャルドネは現在3種類リリースしていますが、今回はカマンベールに合うものとして「鞍掛シャルドネ」を選びました。
ちなみに、発泡性のお酒が合うカマンベールには、アトリエ・ド・フロマージュのハウスワイン「メルロ ロゼ スパークリング」も好相性です。
実は、アトリエ・ド・フロマージュは昨年までぶどう畑を所有してメルローを育てていました。そこで収穫されたぶどうから「メルロ ロゼ スパークリング」と「メルロ クラレット(赤)」の2種類を造り、ハウスワインとして販売しています。
(醸造は塩尻市のサンサンワイナリーに委託)
先代社長がはじめたワイン造りは、現在休止中。今後2~3年、在庫が続く限りはレストランや売店で提供される予定です。
硬質チーズ × ピノ・ノワール
アトリエ・ド・フロマージュの硬質チーズはゴーダタイプで、若いうちに食べるのに向いています。
はすみふぁーむ&ワイナリーの「ピノ・ノワール」は、ぶどう自体が優しい風味で、ワインも優しい味がすると、岩さんは言います。野生酵母で発酵、オーク樽で熟成させており、はすみふぁーむ&ワイナリーのプレミアムワイン「千曲川ワインバレーシリーズ」の中で一番の人気を誇ります。
今回は赤ワインを選びましたが、白ワインなら樽が効いた*1シャルドネもおすすめです。
はすみふぁーむ&ワイナリーは、2009年に初ワインをリリース、2011年からは自家醸造している小さなワイナリーです。代表の蓮見喜昭さんは、10代で単身渡米してメジャーリーグ球団職員などを経てワイン造りに携わった、ユニークな経歴の持ち主です。
*1「樽が効いた」というのは、オーク材などの樽で熟成させたことで、ワインにつく香りや味わいが感じられるという意味
ブルーチーズ × タザワメルロー
アトリエ・ド・フロマージュのフラッグシップと言っても過言ではない、フランスのチーズコンクール「モンディアル・デュ・フロマージュ」で最高賞スーパーゴールドを受賞した「ブルーチーズ」には、東御初のワイナリーであるヴィラデストワイナリーの「タザワメルロー」を。
青カビタイプのチーズは、貴腐ワイン*2のような甘口のワインがよく合うとされています。アトリエ・ド・フロマージュのブルーチーズはクリーム感と、熟成した時の甘みが特徴です。
岩さんは、「メルローが持つアルコール感と、フルボディの『タザワメルロー』の包容力が、ブルーチーズにマッチします」とすすめてくれました。
ヴィラデストワイナリーは2003年にはじまった、エッセイスト・画家の玉村豊男さんのワイナリーとして有名です。タザワメルローは、東御市田沢地区で有機栽培したぶどうを野生酵母で発酵させ、無濾過でビン詰めしています。
*2「貴腐ワイン」は、特定の条件下で貴腐菌によって糖度が非常に高くなったぶどうから作られる極甘口ワイン。フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイ・アスーが世界三大貴腐ワインと呼ばれている
まとめ
写真/アトリエ・ド・フロマージュ売店で販売されている東御ワインとチーズ
アトリエ・ド・フロマージュでは、地元ワイナリーのワインを仕入れて販売しています。生産者とは、東御の農業生産者グループ「YO農会」のクリスマスブッフェをリストランテ フォルマッジオで行い、そこでカーヴ ハタノのワインが供されるといったかたちで、交流を持っています。
現在、リストランテ フォルマッジオではハウスワインを除いて東御ワインは提供していませんが、隣の売店で販売している東御ワインを持ち込んでレストランで楽しむことはできます。
(持ち込み料がかかります)
東御の気候と風土、そして固有の微生物が育んだチーズとワイン。
ぜひ、一緒に味わってみてください。
※この記事で取り上げたワインは、アトリエ・ド・フロマージュ売店にて販売されています。生産量が少なく、時期によって在庫がない場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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