希少なブランド牛肉「信州峯村牛」
地元で熱く支持される「信州峯村牛」
その土地で採れた食材は、その土地で生産されたワインと相性がいいと言われています。そして、東御ワインを積極的にメニューに取り入れている、「地産地消」に強いこだわりを持つレストランのシェフたちに熱く支持されているのが「信州峯村牛」です。
舌の上に載せるだけでとろけていく食感、深みのあるうまみはレストランを訪れる客を魅了してやみません。峯村牛を生産しているのは東御市横堰地区にある「牧舎みねむら」。
「私たちは、人口授精から出荷まですべて自分たちで行う『全頭一貫飼育』で黒毛和牛を育てています。ここにいる牛たちはみんな東御産まれの東御育ち。東御のエサを食べて大きくなった、生粋の『信州和牛』なんですよ」と語るのは代表の峯村誠太郎さん。
一般的に肉牛の生産はその工程によって2つに分かれるそう。母牛に子牛を産ませる「産みの親」ならぬ「繁殖農家」と、子牛を市場で買って大きく育てる「育ての親」ならぬ「肥育農家」です。有名産地の名前を冠したブランド牛も、実は産まれは他県だったりすることも珍しくないとか。一貫飼育をしている牧場は全国的にも少なく、「東御産まれの東御育ちの牛」はそれだけで希少な肉牛であることを意味します。
品質を作る鍵は環境にあり
牛肉の品質を左右する要素は2つあり、ひとつは「血統」、もうひとつは「飼養環境」。血統を重要視する畜産農家は多いけれど、峯村さんは環境が何より大切だと考えています。
「競走馬だっていくらいい血統でも環境が悪かったら速く走れないでしょう? 牛もそれと一緒で、環境によって親から遺伝的に引き継いだ能力を最大限に引き出せると思うんです」
環境づくりの中で特に心がけていることは「牛にできる限りストレスを与えないこと」と言います。
「ストレスなくのんびり育った牛は病気にもならず健康です。結果的によく食べてよく寝るので、いい肉牛に育ってくれるのです」と峯村さん。
環境が変わることや輸送されることも牛にとって大きなストレスになるそうで、一貫飼育はこの点でもアドバンテージがあります。
牛舎を見学させていただくと、悪臭がなく、清潔に保たれていることがよくわかります。放牧スペースも広々としていて、牛たちもノビノビ過ごせそうです。人を見ると寄ってくる牛たちの人懐こさからも、峯村さんたちの愛情を一身に受けて育っていることがうかがえました。
循環型で地域に密着した飼育
中央・北アルプスや、晴れた日には富士山を望む牧舎のロケーションも牛たちにとって最高の環境です。
「湯の丸高原の麓の南斜面にあるので、風の通りがいいんです。雨が少なく年間の日照時間も長いので、牛たちは快適に健康的に過ごすことができます。寒暖差も大きく、ほどよい脂肪を蓄えるのに適しています」
この地形と気候は、実はおいしいワイン用ぶどうを育てる条件と一緒。牧舎がある横堰地区はここ2~3年で「カーヴ ハタノ」「アトリエ デュ ヴァン」と新たなワイナリーがオープンしている注目のエリアでもあります。
この環境が育むのはおいしい肉牛やぶどうだけではありません。このエリアはおいしいお米がとれることでも知られています。晴天率の高さから昔ながらの天日干しで「はぜかけ米」を作っており、太陽の陽射しをたっぷり浴びた稲わらが牛たちの飼料として使われているのです。
「飼料を食べた牛たちから出た良質な牛ふんはたい肥にしています。そのたい肥は水稲農家さんにお返しし、そのたい肥を使ってできたお米の稲わらをいただく『循環型農業』にも取り組んでいます」
牧舎みねむらでは、このような最高の環境で育てた牛を毎年65頭ほど出荷しています。
「今まで可愛がって育てていた牛を出荷するときはもちろん悲しいです。でも、世話をするのに手を抜いていると牛との別れのときに後悔が残ると思うんです。普段から精いっぱい愛情をかけていれば、この子はうちの牧場で育ってよかったと思える。出荷のときに後悔しないためにも手を抜かないと決めています」
販売や6次産業化で新しい風を
牧舎みねむらは、出荷するだけでなく、精肉業者で加工された牛肉を買い戻して販売もしています。
「出荷するまでだとエンドユーザーを見届けられないのが悲しいと常々思っていたんです。食べた人の声を直接聞きたいという思いから、牛肉販売業の許可を取得して、牧場内の直営店で販売するようになりました」
最近、グルメ番組や飲食店などで「A5」「A4」といった牛肉のランクを目にすることが多くなりましたが、これは霜降り度合いや肉の締まり・きめ細やかさなどによって格付けしたもの。牧舎みねむらでは厳選した高品質なA4ランク以上を扱っています。
そのおいしさはシェフら食のプロやグルメたちから口コミで次第に広まっていきました。
ビーフジャーキーやビーフソーセージ、コンビーフ、ビーフカレーなど、オリジナル加工品も販売しています。ステーキや焼肉にするようなA4ランクの自舎製峯村牛が100パーセント使われた贅沢な逸品です。
「コンビーフはわさびじょうゆにつけたり、アツアツのごはんに載せたりするとおいしいですよ。マヨネーズや卵黄を載せて食べるお客さまもいます。ソーセージはポトフに入れるのがおススメです」とおっしゃるのは、奥さまの伊世さん。
「ワインに合わせるなら?」と尋ねると、「そんなに詳しくはないのですが」と前置きしながら「牛肉ですからもちろん赤が合うと思うのですが、コンビーフならシャルドネもいいと思います。脂の多い肉ならメルローですね」と教えてくださいました。
一貫してこだわる「安心で安全な国産牛」
牧舎みねむらは1982年に峯村さんのご両親が4頭の乳牛を飼うところからスタート。1992年、牛肉の輸入自由化をキッカケに黒毛和牛の飼育に移行していきました。
「アメリカやオーストラリア産の安価な牛肉が市販されることになり、多くの畜産農家が不安を抱いていましたが、両親は逆に『これは高級な和牛で差別化するチャンス!』ととらえたのです」。
峯村さんは小さいころから牛に囲まれて育ち、牛は好きでしたが、牧場を継ぐことは考えていなかったそう。しかし、父親が大病を患ったことから2010年に牧場の仕事を継ぐことになりました。
その後、数年おきに口蹄疫やBSEなどの家畜の伝染病が流行し、社会を脅かしました。こうしたピンチと思える状況も、衛生管理をより堅実な体制に整備することで肉牛の安全性向上に努めてきました。
「農林水産省が定めた厳しい基準『農場HACCP認証』や『信州あんしん農産物制度』『放射能全頭検査』をクリアした、安心で安全な牛肉のみを提供しています」。
「HACCP」とは最終製品の一部を抜き取ってそのサンプルを検査する方式ではなく、製造プロセス全体において予測される危害(=HA)を分析し、重要管理点(=CCP)のこと。もっとも合理的な衛生管理方法であることが国際的に認められています。
ソーセージやコンビーフなど牛肉を加工して販売する「六次産業化」も誠太郎さんの代になってから始めたもの。六次産業化とは農家など第一次産業の従事者が加工や販売・サービスまでを手がけ、農林水産物の付加価値をつけること。ワインもまさに農産物から六次産業化した商品です。
東御ワインとのマリアージュは予約必須
「私が牧場を経営移譲されたのはちょうどリュードヴァンやはすみふぁーむ&ワイナリーができたころ。ワインで地域を盛り上げようとする姿に私も刺激を受けたものです」と峯村さん。
峯村牛と東御ワインの組み合わせは「リストランテ フォルマッジオ」「フルールドゥペシェ モモカ」「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」などで楽しめます。また、牧舎みねむら内のショップでもすき焼き用、ステーキ用肉や加工品を購入することができます。
ただし、出荷数が少ない「幻のブランド牛」なので、レストランもショップも、訪れる際は予約必須です!
牧舎みねむら長野県東御市新張1265-354 |