味わう愉しむ

つくり手に聞く、東御の魅力と移住の話(後編)

二村雅彦
二村雅彦
INDEX
  1. ワインと野菜の共通点
  2. 住んで感じる東御の土地柄
  3. 新規就農・移住者へひとこと
  4. インタビューを終えて

ワインと野菜の共通点

二村  宮野さんは野菜だけでなくワインもつくられていますが、ワイン造りについてもお聞かせください。

宮野 ワイン造りにおいても、温暖化は切っても切り離せません。これまでは標高850メートルでのワイン造りは厳しいと言われてきましたが、今年は標高900メートルの所にテール・ド・シエル(小諸市) がワイナリーを造りましたよね。
20年前では考えられないことです。不可能とか向いてないとか言われて打ち捨てられてきた土地が、徐々にワイン造りの適地にシフトし始めていると感じます。

二村  標高が高い所でつくられたワインって酸味が際立っていて好きです。野菜造りとワイン造りの共通点はありますか?

宮野  自然の厳しさや偉大さを感じながら育てたブドウが、ワインになることは、愛おしくて、手にとってくださる皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。農薬をほぼ使わず、有機肥料を使う。味が濃くて、安心なものをお届けする。この2つは、野菜でもワインでも共通して心がけています。

 

住んで感じる東御の土地柄

二村  移住するにあたって、住むエリアのしきたりや暗黙の了解は気になるところ。私も御代田町への移住3年目ですが、”東御のリアル” をお聞かせください。

宮野  エリアによって異なるのかもしれませんが、古いしきたりが残っていることは多いです。たとえば、会ったことがないご近所さんの葬儀へ列席したり、回覧板や配布物を各家に配るお役目があったり。いきなり担うには大変な役が、引継ぎもなく回ってきたときはさすがに驚きました。みんな ”変えなきゃ” という感じはなく、”昔からそんなもんだ” で継続されることが多いのかなと感じます。

二村  なるほど。地区によって違いはあれど、よくも悪くも ”変える” ことに対して腰が重いというか、そもそも意識が向いてないといった感じでしょうか。農業に関してはどうですか?

宮野  新規就農者は、信用が得られるまで農地を売ってもらえない・貸してもらえないといったハードルがあるようです。

二村  市役所が移住者と貸主の間に入ってくれることはないのですか?

宮野  あります。が、今は新規就農相談が年々増えていて、市役所があっせんするときに新規就農者の本気度を確認してから貸主とつなぐようにしているようですよ。

二村  本気度とは具体的に何ですか?

宮野  (新規就農希望者にたいして) 若者なら貯金が1,000万円あるか、ご年配なら跡継ぎ問題は大丈夫かとか。収穫物がないときの厳しさもあわせて伝えて、新規就農希望者の本気度を確認しているようです。僕は、経験を経て独立したのですぐ貸してもらえましたが、実際には厳しい場合もあるようです。

二村  新規就農者と貸主のマッチングができるプラットフォームが今後できるといいですね。

 

新規就農・移住者へひとこと

二村  移住者のパイオニアとして新規就農・移住者へメッセージをお願いします。

宮野  新規就農を希望する若い人たちには、浅く広く、とにかく何でも経験しとけって伝えています。畑の潅水設備の作り方や農機具の操作方法等、僕は独学で身に着けました。身体にしみ込ませたからこそ、いちいち誰かに聞かなくてもできる。経験は、人生のどこかできっと役に立つときがきます。

二村  たしかにそうですね。

宮野  あと、大切にしているのは言霊です。口癖は ”終わり良ければすべて良し“。なんでも楽しみ、好奇心 をもち続けながら生きています。やりたいことに対して周囲から反対されることも多いですが、常に前向きな言霊 で楽しんでいます。

二村  そのポジティブさでいろいろと楽しみながら乗り越えておられるのですね。野菜を出荷する側として、 2019 年からの新型コロナウイルスの影響もあったかと思いますが・・・

宮野  確かに、近隣の道の駅や飲食店への卸売が減ってきびしい時期もありました。

二村  西洋野菜の定期便とか相性よさそうですが、EC サイトでの販売はされましたか?

宮野  定期便やまとめ売りはオンラインで、独自販売に挑戦しました。新しい顧客層からの問い合わせにつな がっているなと感じます。

二村  コロナの影響を見据えながら、今後挑戦したいことは?

宮野  今後を見据えた動きでは、東御市へ移住した就農者のサポートやアドバイザーなど、ウイズコロナで新 しい視野が広がった実感があります。また、農業をひと通り経験した今だからこそ、大学で学びたいなとも思いま す。しっかり勉強して、農業に活かせる知識を身に着けたいです。

 

インタビューを終えて

宮野さんから、「僕は運が良い」という言葉が何度も聞かれた今回のインタビュー。玉村さんとのご縁や環境との 出会い、全てにおいて、いつもポジティブな印象を受けました。 ニコニコしているからこそ、多くの人から慕われるアニキ的存在になれるのでしょう。

まずは環境に飛び込んでみる。経験から学び、臨機応変に対応していく。そのポジティブさが、おいしく鮮やかな 野菜を生み出し続けているのだと感じました。

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二村雅彦
二村雅彦

東信州のローカルビジネスをサポートする株式会社アンド23を経営しています。店舗立ち上げから運営、PR・プロモーション・広報・イベント企画といった集客における課題を伴走しながら解決しています。旅行業登録もしているので、集客ツールとしての旅行業の確立にも挑戦中。ヨーロッパで自転車ロードレース選手をしていたこともあり、サイクリングイベントもこれから積極的にやっていきます。東信州のパンやスイーツ、ワインが大好きで、打ち合わせは軽く飲みながらやることも。オフィスやカフェでまったりと仕事、私事、志事していますので、どこかで見かけたらお気軽に声かけてくださいね。

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