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ノスタルジーとワインを味わう大人の女子旅

辻佳苗
辻佳苗
INDEX
  1. 週末レトロ旅に出かけよう
  2. 上田・柳町は「発酵ストリート」!
  3. 国産小麦と天然酵母パンの老舗
  4. ワイナリー直営のアンテナショップ&カフェ
  5. グラスで少量ずつ試せる千曲川ワインバレー専門のワインバー
  6. 東御・日本の道100選にも選ばれた歴史と情緒あふれる海野宿
  7. カフェ併設のガラス工房&ギャラリーショップ
  8. 千曲川のほとりに建つ、隠れ家的カフェも併設された美術館
  9. 千曲ワインバレーのポータル的存在のビストロ&ワインショップ
  10. 小諸・四季折々の情景の中に古城の面影を堪能する
  11. 蔵を改装した地産地消のイタリアンレストラン
  12. 最後に

週末レトロ旅に出かけよう

千曲川ワインバレー東地区のワイナリーの入り口となる上田駅・田中駅・小諸駅の周辺には歴史と情緒を感じられる古い街並みがあります。

そこには古い建物や蔵を改装したカフェやレストランが集まり、古さと新しさが混在する不思議な空気が流れています。

今回は電車と徒歩でアクセスできる、ノスタルジーとワインを味わう旅をご提案しましょう。

 

 

上田・柳町は「発酵ストリート」!

石畳と町家が美しい古い街並みに発酵食の店が続々!

JR新幹線・しなの鉄道の上田駅から徒歩で15~17分ほどのところにある柳町通り。戦国時代は真田氏が築いた上田城の城下町として、江戸時代は江戸と金沢を結ぶ北国街道の上田宿として古くから栄えてきました。今も往時の名残をとどめる石畳や町家建築の美しい街並みを見ることができます。

350年の歴史を誇る酒蔵や信州味噌の蔵元に、天然酵母のパン屋、ワイナリーのアンテナショップと、発酵食品を扱うお店が多いことから最近では「発酵街道」とも呼ばれています。

 

新たなグルメスポットとしても注目される柳町通り、おいしいものを求めてさあ出かけましょう!

 

 

国産小麦と天然酵母パンの老舗

「ルヴァン信州上田店」のパンは噛めば噛むほど味わい深く、ワインに合う

こちらはパン好きの間で名店中の名店と名高い「ルヴァン富ヶ谷店」の2号店。オーナーの甲田幹夫さんは日本にまだ「天然酵母」という言葉すらなかった1980年の初めごろから国産小麦と天然酵母によるパン作りをしています。甲田さんが上田ご出身というご縁で2004年から柳町通りにお店を構えることになりました。

できるだけ砂糖を使わずに自家製酵母と地元・信州の農家さんが作った小麦、塩と水で作ったシンプルなパンは噛めば噛むほど深い味わい。季節の果物などを使ったパンも並びます。古い商家を改装したお店にはカフェも併設されており、買ったパンをその場でいただくこともできます。

ワインに合うパンを聞いてみると「1番人気のシンプルなカンパーニュにチーズをつけて食べるのもいいですし、くるみとカランツ(レーズン)入りのメランジュ、ドライフルーツとナッツがたくさん入った焼き菓子ベルベデーレもオススメ」とのこと。

パンはグラム売りしてもらえるものも多く、ちょっとずついろいろ買えるのも「電車&徒歩旅」派にはうれしい限りです。

ワインに合うくるみとカランツ入りのメランジュ1.9円/g、ドライフルーツとナッツが入ったベルベデーレ4.5円/g。

東御産のグレープジュース600円。

 

ワイナリー直営のアンテナショップ&カフェ

はすみふぁーむのワインのテイスティングやランチが楽しめる

柳町通りの「はすみふぁーむ&ワイナリー ショップ&カフェ」は東御市祢津にある小さなワイナリーのアンテナショップです。

オーナーの蓮見喜昭さんは2005年に荒れた畑を開墾して、約1,000本のワインぶどうの苗木を定植。東御市のワイン特区制度を活用し、2011年に酒造免許を取得して「はすみふぁーむ&ワイナリー」をスタートさせました。

 

ワイナリーは山あいにあり、週末と祝日のみの営業なので、もっと気軽に自分たちのワインを楽しんで欲しいということから、よりアクセスのよいこちらに店を構えることになったそうです。

周囲に調和するように建てられた町家風建築の1階はカウンターとワイン樽を使ったテーブルが設置され、カジュアルなスタンディングバーといった雰囲気。ワインやジュースを100㎖と45㎖の2種類のサイズから選んで試飲することができます。シャルドネやナイヤガラ、ブラッククイーンなどのワインのほか、ワイナリー直送の樽から注がれる「生シードル」も人気だそうです。

ショップではワインはもちろん、ジュースやジャム、オリジナルグッズを買うことができます。

2階のテーブル席でいただけるランチは野菜たっぷりでヘルシーでおいしいと評判です。一番人気は「柳町発酵通りプレート」。鶏ハムにお隣の岡崎酒造の酒粕を使うなど、柳町通りにある発酵食品をワンプレートに詰め込んであります。もちろん、「発酵つながり」ですから、どれもワインと好相性。ワインもついついおかわりしたくなりますね。

 

柳町発酵通りプレート1,000円。

 

 

グラスで少量ずつ試せる千曲川ワインバレー専門のワインバー

女性ひとりでも入りやすい「Be One」でお気に入りワインを見つける!

上田駅すぐ横のビルの地下1階という便利なロケーションにあるワインテリア「Be One」。ワインテリアとは「ワイン」と「カフェテリア」を合わせた造語で、カフェテリア感覚で千曲川ワインバレーのワインを常時16種類、グラスで気軽に試すことができます。

お店に入ってまず目につくのは、中央に置かれた「エノラウンド」という大型のワインサーバー。専用のカードに料金をチャージし、カードを差し込み好きな銘柄を選ぶと、自動的にグラスにワインが注がれる仕組みです。

量も「20㎖」「50㎖」「90㎖」の3種類の中から選べるので、まずは20㎖ずつ全種類を制覇して、お気に入りのワインを見つける人も多いとか。

ワインに合わせる食も地元産にこだわっています。国際コンクールで金賞を取るなどハム・ソーセージ作りに定評がある上田の「セキ精肉店」、酒蔵の蔵付き乳酸菌を使うなど信州らしいチーズ作りを行なっている佐久の「ボスケソチーズラボ」、信州産豚を使って生ハムづくりをしている姫木平の「アトリエ・ドュ・ジャンボン・ド・ヒメキ」など、千曲川ワインバレー近郊の生産者からおいしいものを取り寄せているそう。地元で作られた食材ですから、地元のワインに合わないわけがありません。

 

新幹線や電車の待ち時間に1人でフラリと訪れる女性も多いそうですよ。

 

 

東御・日本の道100選にも選ばれた歴史と情緒あふれる海野宿

旅籠屋造りと蚕室造りの建物が美しく調和

 

東御市の多くのワイナリーの玄関口となるのがしなの鉄道の田中駅。ここから徒歩20分くらいのところに、まるで時代劇から飛び出してきたかのような情緒あふれる街並み・海野宿があります。

海野宿は北陸道と中山道を結ぶ北国街道の宿場町として江戸幕府によって開設されました。江戸時代の旅籠屋造りの建物と、明治以降蚕室造りの建物が見事に調和した美しい街並みは「日本の道100選」や「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。

 

入口に位置する白鳥神社は日本武尊伝説を縁起とし、奈良時代から平安時代にかけて創建されたとされる由緒ある神社。拝殿前にある大きなけやきのご神木がその歴史の古さを物語っています。この神社が千年以上もここを行き交う旅人を見守っていたのかと思うと、感慨深い気持ちになりますね。

 

 

カフェ併設のガラス工房&ギャラリーショップ

ガラス工房 橙でくるみガラスの美しさに魅了される

「ガラス工房 橙」は吹きガラスの工芸作家のご夫婦・寺西将樹さんと真紀子さんが海野宿にある、もう何十年も使われていなかった古い家をご自身たちの手で少しずつ改装して作り上げた工房&ギャラリーショップです。

吹きガラスとはガラス工芸の技法の1つで、熔解炉で溶かしたガラスを金属の吹き竿で巻き取り、息を吹き込んで成形するというもの。「橙」という店名はガラスを巻き取る壺口がオレンジ色に輝いていることからつけたそうです。

 

寺西さんご夫婦の作品は実用性の中に美しさを備えたものが多く、「飾りものではなく、日常の生活で使うもの、より使いやすいものを作っています。そのためシンプルなものが多いですね」と将樹さん。

中でも人気商品は工房オリジナルの「くるみガラス」。ワインと並ぶ東御市の特産品・くるみが使われています。くるみの殻を燃やした灰をガラスの原料と混ぜ溶かして使うと、このような優しい淡い緑色に発色するのだとか。どこかアンティークのガラスのような懐かしさを感じさせます。

ギャラリーショップの2階のカフェは、さながら工房の作品のショールーム。ここのランプや花瓶を部屋に飾ったら、こんなふうになるのだなと想像が膨らみます。お茶やコーヒー、シードルなどの飲み物やケーキももちろん工房作の器でサーブされます。「器を持ったときの感じやくちびるに当たったときの感じをまずは味わっていただければ」と真紀子さん。

この角度から眺める街道の揺れる柳や格子戸の家々は、歩いて見える景色とまた違った風情があり、タイムマシンから下界を覗いているみたい! 街歩きに疲れたら、美しいガラスと景色に癒されるこんな休憩タイムはいかがですか?

 

リュードヴァンのシードル1,200円とタルトタタン450円。

くるみガラスのシードルグラスは4,500円。

 

 

千曲川のほとりに建つ、隠れ家的カフェも併設された美術館

口で描く芸術家・水村喜一郎さんの作品を常設展示

海野宿の古い町並みを抜け少し歩いたところ、千曲川のほとりに瀟洒な白い建物があります。こちらは、9歳で事故により両腕を失うも、口に絵筆を取って絵を描き続け、画家になった水村喜一郎さんの作品を展示する美術館です。

東御市とのご縁は、東御市八重原にある梅野絵画記念館で個展を開催したこと。当時館長だった梅野隆さんに、東御市に個人美術館を持つことを熱心に勧められたのがキッカケだそうです。2013年5月にオープンし、同年8月には水村さんの作品を御所に飾っているという天皇皇后両陛下(今の上皇上皇后両陛下)が来館され、話題になりました。

水村さんの作品は建物や街並みを描いたものも多く、その深く濃い色調はどこか懐かしさを感じさせ、今回の旅のテーマにピッタリです。

息子さんの水村純朗さんに「実はこんなのもあるんですよ」と案内されたのは美術館裏に併設されたカフェ。美術館前を通りがかっただけでは決して気づかない、これぞ「隠れ家」です。大きな掃き出し窓から千曲川を見下ろすようにカウンターが配置され、いつまでも景色を眺めていたくなる素敵な空間でした。

美術館の開館期間は4月から11月まで。冬期の12月から3月までは休館となるので、ご注意を。

 

 

千曲ワインバレーのポータル的存在のビストロ&ワインショップ

ワインチャペルは「行ってから巡るか、巡ってから行くか」。

田中駅から徒歩約5分のところにある「TOMI WINE CHAPEL」は千曲川ワインバレー東地区のワインを主に扱うビストロ&ワインショップです。東京・日本橋でイタリア料理店を16年間営んできたシェフの石原昌弘さんとシニアソムリエの石原浩子さんが2016年、結婚式専用のチャペルだったこの場所にオープンさせました。

お店は「ワインの入り口」を意味する「ワインポータル」の役割を担っていて、千曲川ワインバレー東地区のワインを20種類以上グラスでいただけます。ボトルですと、30ヶ所以上のワイナリーとヴィンヤード(醸造所を持たないワイン用ブドウ農園)の90種類以上を扱っているそうです。

 

ワイナリー巡りを目的でこちらに来店するお客さまは2パターンあるそうで、「1つはワイナリー巡りの前にお店にいらして、ワインをいろいろ召し上がりながら、訪問されるワイナリーについて『作戦会議』をされるお客さま。もう1つはワイナリー巡りの後にいらして、巡り切れなかったワイナリーのワインを召し上がったり、買ったりされるお客さまです」と浩子さん。

前者の場合は浩子さんが作戦会議の相談やタクシーの手配もしてくれるというから至れり尽くせり。店内には「観光協会か?」と思うほど、各ワイナリーのパンフレットもそろっています。

 

今年は店内にウォークインワインセラー(人が中に入れるタイプのセラー)が完成。温度管理が徹底された中でワインがより見やすくなり、選ぶ楽しみも増えました。「ホールもセラーもオゾン発生器を設置して、低濃度のオゾンでウィルスに感染しにくい環境を作っていますので、安心してご利用ください」とのことです。

次は仲間とワイナリー巡りをするのに作戦会議で訪れたいなと思いつつ、お店を後にしたのでした。

 

おまかせワインプレート1,200円。佐久のチーズ工房ボスケソのフレッシュチーズに東御・八重原産のはちみつ。自家製パテ、生ハム。

カーヴハタノのクラカケメルロー 800円。

 

小諸・四季折々の情景の中に古城の面影を堪能する

日本で唯一の穴城、桜や紅葉の名所、小諸城址・懐古園

小諸城址・懐古園は小諸駅から徒歩3分のところにある歴史公園。小諸城は平安時代に起源を持ち、戦国時代に武田信玄の命により山本勘助らによってその原型が整備されたといわれています。城下町よりも低い場所に城を築いた「穴城(あなじろ)」は日本で唯一なのだそう。

明治4年(1872年)の廃藩置県で廃城となり、天守閣は残っていませんが、その後近代的な公園に生まれ変わりました。当時の建造物は石垣と現在の懐古園の入り口の三之門、駅をはさんで反対側の市街地に存在する大手門のみ。大手門と三之門は共に国の重要文化財に指定されています。

苔むした緑の石垣などを眺めつつ当時のお城の姿を想像しながら園内を散歩するのは楽しいものです。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色とそれぞれの四季で違う顔を見せてくれるので、季節ごとに訪れたくなりますね。

 

 

蔵を改装した地産地消のイタリアンレストラン

薪窯で焼いたピザが人気のチッタ・スロー

小諸駅から徒歩10~12分ほど、北国街道沿いに位置する「チッタ・スロー」。薪窯で焼くピザと地元食材を使ったイタリア料理のお店です。長野県千曲市ご出身で、イタリアで修業をされた市川貴廣さんと埼玉県ご出身の奥さまの未苗さんが2020年1月にオープンさせました。

「チッタ・スロー」とはイタリア語で「ゆっくりな村」の意味。「ファーストフード」に相対する「スローフード運動」「地産地消運動」のスローガンとして使われている言葉だそうです。建物も自然素材を長く使い継いだ古民家にこだわって探した結果、築100年超の蔵に出会い、土と木にこだわってリノベーションしました。

自慢のピザは地場産の全粒粉を加えているので、しっかりとした小麦の味がして、独特の軽い食感があるのが特徴。トマトとバジルのモッツァレラが載った「マルガリータ」や4種類のチーズが載った「クアトロフォルマッジ」など定番のほか、春菊のペーストとレンコンとモッツァレラが載った「ジェノベーゼ」などオリジナリティあふれるメニューもあります。

「イタリア料理は素材を活かした調理法で、素材も蕎麦粉を使うものもあるなど、日本料理との共通点も多いです。赤ワインにも白ワインにも合います。いろんな方にイタリア料理をもっと気軽に楽しんでもらいたいですね。地元の食材を使っているので、今後は地元のワインにも力を入れていきたい」と未苗さん。

地元ワインと地元食材のマリアージュが楽しめるようになるのが待ち遠しいですね。

 

前菜盛り合わせ(お米のコロッケ・アランチーニ、カポナータ、パテ・ド・カンパーニュ、カマンベールチーズ、トマトジャム)850円、ゴルゴンゾーラといちじくのピザ1,500円

 

最後に

古さと新しさが混在する、大人女子の楽しみ方。
いかがだったでしょうか。

ふらりと1人でも、気のおけない友人と語らいながらでも、気軽にまわれる3つの駅周辺をご紹介させていただきました。

ワイン片手に、楽しいほろ酔い時間をお過ごしいただけたら幸いです。

writer
辻佳苗
辻佳苗

大学在学中より執筆活動を始める。書籍のほか、日経新聞のwebサイトNIKKEI STYLEの食のコーナー「グルメクラブ」などに執筆。2011年に首都圏より上田市に移住。2019年より東御市民に。2020年春よりヴィラデストワイナリーやアルカンヴィーニュなどがあるワインの里・田沢地区の築150年の空き家をお試し移住シェアハウス+コミュニティスペースとして運営。